僕は、事故の後遺症で手が動きません。
ですので、パソコン操作にSmartNavという機器を用いてカーソル操作を行っています。
SmartNavは、顔などに反射シールを貼ることで、とても繊細にマウスカーソルの動きを制御できるようになります。設定次第ではクリックも自動で行うことができ、完全ハンズフリーでパソコン操作を行うことが出来るようになる補助デバイスとなっています。
そんな優れたSmartNavなんですが、もう10年近く使ってきて、1つだけ不満点が。
それは、「使用前、反射シールを顔等に貼る必要がある」ということです。これが毎回のことなので地味に面倒くさいです。反射シールがなくなったら、買い足して適当な大きさにカットする必要もありますし。
そういった中、先日「視線で入力することが出来るTobii Eye Trackerとか興味ありませんか?」とフォーラムに書き込みがありました。
わいひらさんは視線入力にはご興味あられますか?
以前は軽く100万円を超える高級品でしたが、装置だけであれば2万弱で買えるようになりました。
実は、視線入力には滅茶苦茶興味がありました。
だって、反射シールを貼る必要もなく、パソコンの前で視線を動かせば操作できるなんて最高じゃないですか。
個人的には、もっと値段のするものだと思っていたのですが、「2万円で購入できるなら例え失敗しても許容範囲」ということで、試しに購入して使ってみることにしました。
目次
Tobii Eye Trackerとは
Tobii Eye Trackerは、ゲームプレイヤーの頭や目の動きを検出し、マウスやキーボード操作を行うための補助入力システムです。
冒頭、僕は「パソコンを目線で操作するために購入」と書きましたが、Tobii Eye Trackerの本来の目的は、ゲーム用のアイトラッキング(目線調査・補助操作)デバイスです。
例えば、FPS(武器を用いたシューティングゲームの一種)等の視線移動をトラッキングして分析したりするのに利用できます。
Tobii Eye Tracker対応ゲームであれば、「視線の移動でカーソルキー移動」ができたり、「凝視することで左クリック」的なことまでは、できるぽいです。
基本的に通常ゲームで出来ることは、「基本は視線停留による左クリック機能のみ」と考えた方がよさそうです。
質問: Windows10で、マウス無しで操作してみたいのですが マウスと同等の機能 カーソルの移動、右クリック、左クリック等 できますか?
回答: 基本は視線停留による左クリック機能のみです。
別途ソフトをインストールすれば、簡単なパソコン操作であれば、行えるようになります。
マウスのいろいろな機能を使うためには「視線マウス」ソフトウェアを使う必要があります。
(Tobii Eye Tracker 4Cはゲームデバイスですので、付加機能は追加のソフトウェアが必要です。)
フリーの視線マウスソフトウェアを使用されるならばClick2Speakをお試し下さい。
http://www.click2speak.net/これは本来、障害のある人が使われる「オン・スクリーン・キーボード(視線で使うクリックパレットのようなもの)」として開発されたものですが、Mouse clicks keypadの機能(下記マニュアル11ページ)やAdditional keys/ keypadsの機能(下記マニュアル10ページ)を使えばカーソル移動や右クリック、ドラッグなども可能です。
http://www.click2speak.net/userfiles/files/Manual.html日本製の障害者用有料ソフトウェアではmiyasuku EyeConSWがあります。(こちらは重度障害者の意思伝達装置として開発されたもので、クリック等の機能はその一部でしかありません。)
miyasuku EyeConSWの視線入力で指定、スイッチ入力で決定をする方法は誤操作・ご入力が少なく、使いやすいです。
https://www.miyasuku.com/software/18
今回僕は、この「視線でマウスを思うように動かすことが出来るか?」を確認するために購入することにしました。
Tobii Eye Trackerについては、以下の動画(英語)を見れば、ある程度イメージは掴めるかと思います。
購入したTobii Eye Tracker
で、届いたTobii Eye Trackerがこちら。
段ボール状の箱を開けると、中からまた黒い箱が出てきました。
更に箱は、横からスポッと抜ける形状になっており、抜き出して出てきた箱がこちら。結構凝ってます。
ようやく出てきた最終箱をパカッと開けるとTobii Eye Tracker本体が現れます。
1段目を取り出すと、USB2.0ケーブルが綺麗に収納されていました。
更にその下には、モニターに取り付けるためのマグネットが2本入っていました。
中身をすべて取り出して並べると、以下のようになります。
- Tobii Eye Tracker 4C本体
- USB2.0ケーブル(本体部分と合わせると80cm)
- モニター取り付け用のマグネット×2
- 取り扱い説明書(英語)
思っていたより、付属品が少ない印象を受けました。付属品が少ないほど、シンプルで取り付けやすくなるので、これはありがたいです。
最小限の構成では、「本体」と「取り付け用マグネット1つ」だけで利用することも可能です(ケーブル長さが足りれば)。
Tobii Eye Tracker本体
Tobii Eye Trackerの本体がこちら。横幅は30cmぐらい。
裏面はこちら。矢印部分に強力なマグネットがついており、これを利用してモニターに取り付けます。
USBケーブル
延長用のUSB2.0ケーブルはこちら。
特にケーブルを延長する必要がなければ、不要となります。
取り付け用金具
モニターへの取り付け金具はこんな感じ。
取付金具は2つあり、「2台のモニターで1つのTobii Eye Trackerを使い回す」なんて使い方も可能です。
台紙から外すとこんな感じ。
素材としては、ただの鉄だと思います。裏面には両面テープがついています。
これを、モニターの下部に貼り付けて、Tobii Eye Trackerをマグネットでくっつけます。
Tobii Eye Trackerの取り付け
Tobii Eye Trackerの取り付けは、かなり簡単。
以下は、英語の説明書ではありますが、説明図でやり方は推測できると思います。
上記を踏まえた上で、実際に取り付けてみました。
まずは、取り付け用金具をモニターの下部に、あらかじめ付着している両面テープで貼り付けます。
あとは、Tobii Eye Trackerを取付金具にマグネットで貼り付けた後、USBケーブルを接続します。
たったこれだけ。
Tobii Eye Trackerの初期設定
Tobii Eye Trackerを接続した後、パソコン側で初期設定を行います。
まずは、Tobii Eye Trackerのドライバをインストールする必要があります。以下から「Tobii Eye Tracking Core Software」をダウンロードしてください。
ダウンロードが終わったら、ファイルを実行してインストールを行ってください。
インストール
インストール作業特に難しい作業はありません。
規約に承諾するだけで
インストールが始まります。
「インストール成功」と出るので、「続ける」をして、Tobii Eye Trackerの設定を始めます。
すると、Tobii Eye Trackerが起動するのでしばらく待ちます。
「はじめましょう」画面が表示されたら「次へ」を押してください。
すると、Tobii Eye Trackerソフトの更新が始まるのでしばらく待ちます。
ソフトの更新が終了したら「次へ」を押してください。
Tobii Eye Trackerの位置合わせ
すると、以下のような画面が表示されるので、あらためてTobii Eye Trackerの取り付け状態の確認をして「このディスプレイ」ボタンを押します。
すると、以下のように「Eye Tracker上部のマークに線を動かしてください」と表示されます。
このときに、モニターに表示されている線の位置と、実物のTobii Eye Tracker上の線の位置を合わせます。
画面上のスライダーを左右に動かして微調整を行ってください。
キャリブレーション(微調整)
マーカー設定後、キャリブレーション(微調整)が始まります。
キャリブレーションと聞けばなんだか難しそうですが、単にドットを目で見つめるだけです。
以下のようなドットを爆発するまで見ます。
30秒~1分くらい、これの繰り返し。この作業により、目の位置を正確に把握します。
最後に、目の位置が検出されます。
キャリブレーション後、名前をつけて個別に設定を保存します。
個別に設定ができることで「利用者に合わせた設定」をそれぞれ呼び出して、複数人で利用することも可能です。
チュートリアルのゲーム
設定を保存すると、チュートリアル的なゲームが始まります。
ゲームは単純で、隕石を視線でとらえて武器で撃って破壊するというもの。
見たところに、ターゲットマークが入るので、スペースを押せば隕石を破壊できます。
目線で操作するというのが新感覚で、結構楽しいです。
目線で操作することが出来るマニュアル
最後に、目線で操作可能なマニュアルが出てきて、できることをおさらいします。
視線を動かすだけで、項目にカーソルが合うので、これも結構楽しい。
使ってみる
全ての設定を終えると、タスクにTobii Eye Trackerのアイコンが出てるのでクリックすると、以下のような設定画面が表示されます。
「Gaze Trace」をクリックすると、目線の位置に凝視マークが表示されます。
これを使ってみると、目線の位置をしっかりととらえているのが分かります。
トレース機能で、文章を読んでみると、ちゃんと目線を追っているのが分かるかと思います。最後の方で右下にある「録画停止ボタン」を押す目線までとらえています。
思っていた以上に、正確に目線をとらえているようです。
地味に便利な機能
ある程度実用的で、地味に便利な機能といえば、「視線の先にマウスカーソルをワープさせる機能」です。
まず、マウスカーソルを移動させたいところを見つめて、マウスを少しだけ動かすと視線の位置にマウスカーソルがワープしてきます。
この機能を使うと、最小限のマウス操作で大きくカーソルを動かすことが可能です。
Tobii Eye Trackerでパソコンを操作するためには
上記までが、Tobii Eye Trackerデフォルトでの機能のほとんどだと思います。
Tobii Eye Trackerを用いて、視線で完全にパソコン操作するためには、他にも設定が必要です。
まず、完全に目線でカーソル移動させるには、以下のようなソフトが必要です。
Click2Speak(英語、無料)
Tobii Eye Trackerを用いた視線移動によるマウスカーソル操作を実現できます。
上記画像のようなキーボードも表示され、文字入力も行うことができます。
HeartyLadder+HeartyAi(無料)
手などが不自由で、キーボードやマウスでの入力が出来ない方のために開発された文章入力用のソフトウエアです。
HeartyLadderとHeartyAi双方をインストールして利用する必要があります。
miyasuku EyeConLT(有料)
視線入力による意思伝達システムmiyasuku EyeConの簡易版です。
こちらは、有料ソフトですが、日本語表示なので、取っつきやすいかと思います。
視線でカーソルが動かせるようになります。
追記:Windows10で利用
ベータ機能ながら、Windows10でも利用可能になったようです。
Windows10での設定方法はこちら。
Tobii Eye Trackerを用いてパソコンを操作させてみた感想
上で紹介したソフトをそれぞれ試してみて、Windows操作を行ってみました。
実際、目線でマウスカーソルを動かしてみると、精度的にはかなり厳しいものがあります。
例えば、以下のようなフォルダアイコンくらいある大きさのターゲットならば、何とかクリックすることは可能です。
けれど、Windowsの「閉じる」ボタンのような、小さなターゲットだと、目標が小さすぎてなかなかカーソルが合わせるのが大変です。
僕は、よくエディターでプログラミングを行うのですが、エディターの文字とかは更に小さいので、操作は不可能と言って良いかと思います。
やはり、手を使わずにマウスカーソル操作をするのに精度を求めるのであれば、まだまだSmartNavに分があるといってよいでしょう。
Tobii Eye Trackerの良い点
ただ、そうは言ってもTobii Eye Trackerにも良いところはあります。
纏めてみると、こんな感じでしょうか。
- マウスカーソル移動を補助してくれるワープ機能は地味に便利
- マウスワープ機能の利用は別途ソフト利用は不要
- 目線トラック機能はサイトの視線移動とかを視覚化できて面白いかも
- 障害者向けの意思伝達ソフトのような大きなターゲットを操作する用途であればハンズフリーの目線操作オンリーでいけそう
- 初期設定がとても簡単
- 利用するのに特に用意が必要ない(SmartNavの反射シールのような)
- SmartNavとかよりも全然値段が安い
- 目線で移動操作対応のゲームがあれば新感覚で楽しそう(ゲームをやらないので対応ソフトがどれくらいあるのかは分かりません)
「Tobii Eye Trackerは大きなターゲットに対して操作するもの」と割り切って利用すれば、値段も安いですし、初期設定も簡単なので、ある程度有益なソフトになり得るかと思います。
Tobii Eye Trackerを購入する前に気をつけたい点
反面、Tobii Eye Trackerを購入するならば、以下の点に気をつけたいところだと思います。
- 細かなマウスカーソル作業を行うのには不向き
- プログラミングをしたり絵を描いたりはおそらく無理
- 細かな操作を目的とするならSmartNavの方が向いている
- パソコンの前に座った状態でないと利用不可能(ベッドで寝ながらとかは無理そう)
- Win10をアップデート後、SmartNavの挙動がおかしくなってしまった←New
Tobii Eye Trackerで細かな操作が難しいというのは上で書いた通りです。
後、僕はTobii Eye Trackerをベッドで寝ながらも使えると思っていたのですが、基本的にTobii Eye Trackerは以下のような状態で座りながら利用するためです。
というのも、Tobii Eye Trackerは以下のようにモニターの下に取り付けないと利用できないからです。
なので、寝ながら使おうとすると、顔面の真上(よりちょっと下)に取り付ける必要があり、あまり現実的ではありません。
やるにしても、取り付けがかなり大変そう。
これはあくまで僕の環境の事ではありますがSmartNavとTobii Eye Trackerを共存させる場合は注意が必要かと思います。
まとめ
Tobii Eye Trackerを利用してみた結果、僕のようにプログラムを書いたり、サイト作成したりする用途向けに利用するまでは、精度は高くないと感じました。
ただ逆に、HeartyLadderといった、「障害者支援のサポートソフトを用いて文字入力できれば良い」といった用途であれば、値段も安く、初期設定も簡単なので、導入しやすいかと思います。
個人的にもう少し精度が上がれば、目線さえあれば利用できるので、非常に使い勝手が良いものになるという期待感は持たせてくれました。非常に将来が楽しみなデバイスだなと。
というわけで「(障害者向け)入力支援ソフトで文字を打ちたい」とか「目線でマウスカーソル移動を補助したい」なんて場合には、便利なソフトとなり得るかと思います。
パソコンへの固定用の器具として同時に買われているもの。
お久し振りです。
https://www.microsoft.com/ja-jp/enable/products/windows10/eye.aspx
マイクロソフト側も、視線入力に前向きなようで嬉しいです。
私はPCEyeMiniでWindowsタブレットをタブレットスタンドに掛けて、寝ながら使っています。
ニュースを読んだり、動画見たりが用途です。