先日、障害者作業所の月給(正確には工賃)の全国平均が、1万3079円(平成22年度調べ)ということを書きました。
で、僕がいっていた作業所では、交通費を引くとマイナス、つまりお金を払って働いていたことを書きました。
参考 障害者作業所で働いてみたときの話。私の月給は〇〇円です。
平均では1万3000円、少ないところでは500円なんてところもある。では、経営がうまくいっていて儲かっている作業所は、「いったい月にいくらぐらいの工賃がもらえているのか?」と思ったので、調べてみました。
photo by Heinrich-Böll-Stiftung
目次
NEWSED PROJECTの場合
すると以下のような記事を見つけました。
そこで今、障害者支援を志す社会起業家の間で、ビジネスノウハウを持ち込んでそのギャップ解消を図ろうという挑戦が始まっている。市場で受け入れられる魅力的な商品を開発したり、継続的に販売していく流通の仕組みを構築したりすることによって、授産製品の売り上げを伸ばし、施設で働く障害者の賃金を引き上げようという取り組みだ。
この記事では、「NPO法人のNEWSED PROJECT」と「就労継続支援B型事業所hana」の試みを紹介しています。
主に取り扱っている商品は以下。
- 英字新聞を使用したおしゃれなトートバッグなどの「新聞バッグ」
- 店舗で使われていた什器の色柄付きアクリル板を再利用したピアス、バッジなどのアクセサリー類
- 学校のいすの背板や天板を再利用したハンガーやダイニングテーブル
- 東京ドームなどで使われているテント生地の廃材を使った書類ホルダー
- 自動車のシートベルトを再加工した蝶ネクタイ
主に、リサイクル・リユース商品。これは、僕が行っていた作業所も素材は違えど似たようなことをしていました。
これらを売ることで、多い人で月3万円の工賃を受け取っている人もいるそうです。全国平均の2倍以上とは凄いですね。
では、僕の行っていたところと似たようなものを作りながら、なぜこれほど差があるのでしょうか?記事の中では、NEWSEDの取り組みについても紹介されていました。それを読む限り、一般的な作業所との違いは以下。
- 立地・販路が首都圏
- 商品企画・開発から販路開拓、マーケティング、販促プロモーションまでブランド管理の一切をセールスプロモーションのプロが行っている
1は、障害者作業所でなくても地方と差が出るからしょうがないとして、2のプロ(NEWSED PROJECT)の力は、大きいです。
大抵の作業所の職員は障害者支援のプロではありますが、モノを開発・販売するプロではありません。そこをモノを作る・売るなどに関することはプロに任せたと言った感じです。
NEWSED PROJECTでは、『作業所の商品だからと言って、付加価値の高い確かな商品なのだから、決して安売りしてはいけない』とのポリシーを曲げないそうです。それでも売れるのだから品質もとても良いものなんでしょうね。実際に品質チェックがものすごく厳しそうです。それを、全国に60店舗ある販路で売るといった形になります。詳しい取り組みは、上記にある記事を読むことをお勧めします。
それにしても、全国平均の2倍以上の3万円を稼ぎ出すのは凄いですね。もともと数千から1万円程度の工賃から現状にまでなったそうです。作業所の生産性を実際に目で見ていた僕にとって、その苦労は大変なものだったのではないだろうかと推測できます。
どこの作業所も、そうなのかわかりませんが利用者の工賃は大抵は労働時間に応じて全員平等に振り分けられます。このNEWSEDのところがどうなのかわからないのですが、全員平等にベースアップしたのなら、プロの力恐るべしといった感じです。
わだちコンピュータハウスの場合
わだちコンピュータハウスは、四肢まひを中心とした重度の障害者が、コンピュータを使って働く場(障害者就労支援施設)です。
ここでは1980年代の創業当時は、作業所の主な仕事内容として、手作業による反復作業が中心で平均工賃は、数千から1万円だったそうです。
そこで、会計士をまねいて簿記講座やコンピューター講座が重ねられ、「わだちコンピュータハウス」として再始動。業務内容を以下のようなものにしたそうです。
- 行政や一般企業からの受託によるデータ入力・加工
- ホームページ制作
- 事務処理系システムの開発
- アンケートの企画・集計・分析
- 行政計画のコンサルタント
- テープ起こし
- DM代行発送
- 障害者向けITサポート
これらを障害状況や能力に合わせて仕事を組み立てたそうです。速さや正確さを要求されるデータ入力や編集作業は、健常者のアルバイトやパートに依頼することにより、苦手部分の穴を埋める工夫をされています。
こうした取り組みにより、利用者の平均工賃は平成8年度から10万円を超え、その後も概ね10万円~12万円をキープしているようです。
photo by AJU自立の家 わだちコンピュータハウス
その試みなどは、平均工賃10万円の維持に向けて わだちコンピュータハウスにて詳しく書かれています。
それにしても、10万円以上とは凄いですね。僕も、手足が動かない重度障害者が収入を得るには、パソコンを使った仕事が最もハンデが少ない(ハンデがないわけじゃないけど最も差が少ない)と思い、10年以上前にプログラムを始めましたが、あながち間違いではなかったようです。
参考 手足の動かない重度の身体障害者一級でも出来そうな仕事を考えてみた(10年前の話)
参考 障害で指が動かないけど10年前プログラムを始めてみて、これまでの経緯
まとめ
作業所によって、施設の種類が違ったり、障害の程度などの違いもあるので、一概には比較できないのですが、作業所の工賃を大幅にアップさせたのは凄いですね。今回はネットで調べただけですが、他にも高い工賃を利用者に支払っている作業所もあるかもしれません。
注意点
作業所と呼ばれるものの中には次の種類のものがあります。
授産施設
就労継続支援A型
就労継続支援B型
就労移行支援
地域活動支援センター
小規模作業所 等
就労継続A型施設などは、雇用契約を結ぶので、少ない時間しか働けませんが最低賃金(工賃ではない)は支払われます。大体月4万円くらいだそうです。
ですので、どのようなタイプの作業所かによって、収入(工賃)が違ってくる場合があります。