重度障害者の社会復帰とは何か?を考えたときに僕は「納税」と設定してみた話

僕は過去、事故で首を骨折して、頸髄損傷となりました。

その結果、両手両足が動かなくなり、重度障害者となりました。

それはそれとして、事故で障害を負うと、当然病院に運ばれ、入院となります。で、入院生活中に知人とか病院関係者に言われるわけです。「リハビリを頑張って社会復帰しないと」と。

基本、完全に頸髄損傷状態になるとリハビリをしても、現代の医学では治りません。治らないものは、考えてもどうしようもありません。なのでそれは良いとして、そういった言葉を何度か聞くうちに、僕も入院中、「いつか、社会復帰はしたいなぁ」とは考えていました。

ただ、そんなことを思っている日もつかの間、ふと思いました「自分のような体も動かない重度障害者にとっての社会復帰とは何なんだ?」と。

今回は、そのことについて書きたいと思います。

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重度障害者の社会復帰とは何かを考える

タイトルにもある通り、「体が動かない重度障害者にとっての社会復帰とはなんなんだろう?」とその後、考えるようになりました。

というのも、「普通の人が怪我や病気で入院した際の社会復帰」であれば、怪我(もしくは病気)を治して職場等に復帰した時だと思います。けれども、手足が動かず、自分で通勤出来ない状態では、職場復帰は不可能です(相当頭脳が優秀な人を除く)。

元の職場に、復帰出来ないなら、「新しい職場に就職した時」が社会復帰なのかもしれません。けれども、重度障害には、基本的に就職先というか求人もないです。

実際、退院後「障害者向けの求職サイト」で調べたことがあるのですが、「上肢障害」「下肢障害」の求人はありました。けれど、「四肢障害」は、選択肢すらありません。

障害者求人サイト

なので、「新しく就職して社会復帰」と言うわけにもいきません。

そうなってくると、「何をもって社会復帰となるのか?」が、ますますもってわからなくなりました。

簡単なところで良いのであれば、「車椅子にでも乗って、外出できるようになったら社会復帰」とでもすれば良いのかもしれません。けれど、それだとやはり違和感があります。

その違和感について自分でも考えてみたのですが、僕は「何かしら社会に貢献してこそ社会復帰」なのだと思っているのだっていうことに気づきました。

僕は日々、障害者年金や、ヘルパーさん、訪問看護師さんといった、社会制度に非常にお世話になっています。なのでその、「社会に何か返すことができれば、社会復帰と言って良いのではないだろうか?」と考えるようになりました。

これは、受傷後何年かして落ち着いた時にようやく思ったことです。受傷後数年間は、自分に起こったことが受け入れられず、「死んだ魚の目」をして毎日過ごしていたような気がします。

僕が重度障害者の社会復帰で出した結論

その後、「僕でもできる社会貢献とは何か?」について、さんざん考えました。

そして考えた結果の1つの答えとして「どんな形でも良いので働いて、少額でも良いので納税したときが社会貢献」で良いのではないかと考えました。そして、納税できた時が「僕にとっての社会復帰」だと。

というのも、多くの人がご存知のとおり、日本には「国民の三大義務」というのがあります。

それがこちら。

  1. 教育義務
    すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
  2. 勤労義務
    すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
  3. 納税義務
    国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

この義務を果たしてこその社会復帰だろうと。

ただ僕には、子供はいません。なので、教育義務は果たすことができません。

ですので、それはしょうがないとして、「勤労義務」と「納税義務」は、果たすことができればと、考えました。

ただ、「勤労義務」は、少し何かしらの手伝い程度に働いただけでも、「働いた」とは言えます。けれども、社会にもほぼ貢献していないです。

けれども、「働いて得た収入から納税した」となると、話は変わってきます。僕は、「納税する」ということは立派な社会貢献だと思っています。基本的に税金は、適切に配分され社会インフラ等に使われるからです(実際適切に再配分されているかは別)。

なので最終的に「重度障害者の社会復帰とは何か?」という問いに対して、僕が出した答えは、「何でも良いので仕事をして得た収入で納税する」という結論に至りました。

あくまで僕の中での結論です。

重度障害者でもできる仕事を考えた

ただ、「仕事をする」と言っても、何でもできるわけではありません。

肉体労働なんて絶対的に無理です。何か「頭と、わずかに残った体の機能を駆使してできる仕事」である必要があります。

いろいろ考えた結果、僕はプログラミングをするということに決めました。

僕は昔、事故で首の骨を折っちゃって頚椎損傷(C4-5)で四肢麻痺となりました。ほぼベッドで寝たきりの生活を十数年しています。...

ただ、プログラミングで、ソフトを作ってみたりしたのは良いものの、稼げたお金は、小銭程度で納税するとまではいきませんでした。

自分の体をよくよく考えてみて、「それでも何かできそうなものはあるか?」と考えてみたとき、とりあえずプログラムをしてみようと考えた経緯は、...

けれど、プログラミングをしているうちに、始めたブログに広告を掲載していると、そのうち、「プログラミングで入ってくる収入」以上に「ブログで入ってくる収入」が上回るようになりました。

そこで方針を転換し、「これからはブログで収入を得て所得税納税をする!」と決めて始めたのが、当ブログです。

重度障害者(障害1・2級)が納税が必要となる収入の目安

ただ、「納税する」といっても、収入がいくらで所得税を納税する必要性が出てくるかを、知っておく必要があります。

調べた結果、白色申告(簡単な確定申告)だと、「身体障害1・2級の場合は収入(売上から経費を差し引いたもの)が78万円より多い場合」が目安だということが分かりました。

ちなみに内訳は、こちら。

  • 基礎控除:48万円
  • 特別障害者控除:40万円

参考 No.1160 障害者控除|所得税|国税庁

もちろん、収入が78万以下であっても、納税をしたければ、払っても問題ないと思います。ただ、できれば「払う必要がある分だけキッチリと納税する」というのが、やはり理想でしょう。

あくまでも単純計算です。その他にも、医療費控除等、様々な控除がありますが、そこまでは加味していません。説明すると長くなるので。
ちなみに、青色申告をする場合は、単純計算で最高143万円までが控除となります。ただ、青色申告をするには、開業手続きも必要になってきますし、会計も少し複雑になります。

紆余曲折ありながらも自分の仕事に取り組んだ結果

その後、「納税という社会復帰クリア条件」を目指し「ブログで収益を得ること」を主軸として、仕事に没頭しました。

僕がブログで基本的に行っていることは、ほとんど以下の方法に集約されます。

以前の記事「障害で指が動かないけど10年前プログラムを始めてみて、これまでの経緯」の最後の方で、月に3~4万円の報酬が入るブログを作...

その結果、2015年において、年間収入が78万円を上回ったので、2016年の2月に確定申告を行いました。その後、納税額が銀行から引き落とされ、無事に納税をすることができました。

それは、僕が事故って怪我をしてから約20年が経った頃でした。

まとめ

受傷後初めて、納税した時は「自分もようやく社会復帰出来たかな(社会貢献出来たかな)」と、思えるようになり、じわじわと嬉しさが込み上げてきました。

正直、「税金を支払って嬉しい」というのも変な話なのですが、僕が長年「社会復帰の目標としていたゴール地点」でもあったので、実際に嬉しかったです。ただどちらかというと、「税金を払って嬉しい」というよりも、「超難しいゲームをようやくクリアした達成感」みたいな感じです。

本当に道程は長かったので…。

とりあえず、念願の目標を達成することはできました。けれど、今後もブログは続けていくつもりです。

というより、ブログを書いているうちに、「書くのが思いのほか楽しくてやめられない」という状態になってしまったというか。やるのがもう生活の一部だったので、やらないと気持ち悪いというか。

自分の目標を達成するために、いろいろと試行錯誤しているうちに、僕の場合で言えばブログのような「自分がやりたいこと」が見つかったことが、何よりも嬉しいかもしれません。

受傷後かなりの期間、「やりたいことがない状態」が続いたのですが、無味乾燥で「ただ生きているだけ」みたいな状態だったので。これはこれで結構辛い。

とにかく、納税を目標としたことで、「自分のやりたいこと」が明確になったのは一番の収穫です。

とりあえず目標は達成した訳ですが、今のところ、次の目標は何も考えていません。これに関しては、今後も生活をしていく上で、新たな目標を設定していければなと思います。