「パラリンピック」が「オリンピック」を超える日

ソチパラリンピックが間もなく始まるのでパラリンピックの話。

パラリンピックが、オリンピックを超える日は、そんな遠くないと思っています。

何をもって「超える」ことになるかは、人気、経済効果、競技人数、いろいろあるとは思います。しかし今回は、「パラリンピック選手がオリンピック選手に同じ競技で勝つ」ことによって超えるという話です。

といっても、このような考えは以前からさんざん言われていたことです。

有名なところでは、アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 16話 心の隙間」で、義体化(サイボーグ化)した選手によるパラリンピックのボクシングが人気競技になっています。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX #16「心の隙間 Ag2O」

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX #16「心の隙間 Ag2O」
© 士郎正宗・Production I.G/講談社

作中の時代は2030年、義手・義足を通り越して体全体を義肢化し、もはやサイボーグ同士の戦いとなったボクシングは、人気競技化しています。そりゃそうだ、世界最強のサイボーグ同士が殴り合う競技かあったら僕も見てみたい。

パラリンピックが、オリンピックより人気になるかは別として、もう既に記録の上では、パラリンピック選手がオリンピック選手に迫っている事例も既にあります。

その事例というのは、陸上競技のオスカー・ピストリウス選手です。

Oscar_Pistorius_2_Daegu_2011

オスカー・レオナルド・カール・ピストリウス

南アフリカ共和国のパラリンピック・オリンピック陸上選手。

両足義足のスプリンターで、アイスランドの義肢メーカーオズールが制作した、まるで刃(Blade)のように薄い炭素繊維製の競技用義肢を使用しているため、"ブレードランナー"(Blade Runner)の異名を持つ。両足切断者クラスの100m、200m、400mの世界記録保持者。健常者の大会にも出場するなど、障害者スポーツの印象を覆す活躍で注目を集めている。

オスカー・ピストリウス – Wikipedia

最近では、恋人を銃で射殺した義足のランナーとしての方が有名かもしれません。

それはさておき、彼の自己ベストタイムとロンドンオリンピックの優勝タイムこちら。

ピストリウス選手 ロンドン五輪優勝
100m 10秒91 9秒63(ウサイン・ボルト) 1秒28
200m 21秒30 19秒32(ウサイン・ボルト) 1秒98
400m 45秒07 43秒94(キラニ・ジェームス) 1秒13

オリンピックの上位争いをするには、この差は大きいかもしれません。しかし僕は「両足のない人とオリンピックのトップランナーとの差がわずかこれだけしかないのか!」と当時驚き、「義足はここまできたか」と思ったものです。

特に400m走の差は本当にもうわずかと言ってしまっていいと思います。この差は、例えば義肢メーカーが、さらに走るのに適した反発力の強いブレードを開発してしまえば、一気に逆転してしまう差であると思います。

しかしこうなってくると、「足に跳ねる板があるなんて不公平じゃね?」「それってもはや肉体競技じゃなくね?」なんて意見も出てきます。実際に北京オリンピックでは、これが問題になりました。

ピストリウス選手は、400mで北京オリンピック出場を目指していましたが、国際陸上競技連盟 (IAAF) はカーボン製の義足による推進力が競技規定に抵触するとして一旦は却下されます。しかしピストリウス選手はこれを不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴、その後CASは、IAAFの判断を覆し、ピストリウスが健常者のレースに出場することを認める裁定が下ります。これにより参加標準記録を突破すればオリンピックに出場できるようになりました。

そんなわけで、陸上競技においては、障害者がオリンピック選手を超える下地はもう既にあります。僕自身の予想としては超えるのは、10~20年後とそう遠い未来ではないと思っています。その後、様々な競技がそれに続くでしょう。

そうなると結局、僕はオリンピックとパラリンピックは明確に分けられるようになると思います。それは身体障害者側の、身体能力の向上からの結果よりもテクノロジーの向上から出る結果が目立つようになるからです。(少なくとも競技者以外にはそう見える。)

例えば、マラソン選手と自転車選手が同距離を走って競争しても、盛り上がらないですよね?自転車が有利すぎて結果がわかりきってるから。これと同様に、逆転現象が起きた観客の目には、パラリンピック選手は「有利な器具に乗っている人」としか見えなくなってしまうと思います。(現に車椅子マラソンは、同競技とは思われてないはず。現在の世界記録は1時間20分14秒です。)競技の面白さが損なわれては、興行は成り立たないでしょう。これは放映権料、スポンサー料など莫大なカネが動き、興行結果も重視される近代オリンピックでは重大な問題です。

そんなわけで、さらに何十年後かには、オリンピックと、パラリンピックは明確に別の道を歩むと思います。しかし僕は、それで良いと思います。

オリンピックは、肉体の究極を求める大会。パラリンピックは、人間とテクノロジーの融合を極める大会になればと思います。俗な言い方をしてしまえばサイボーグ技術を競う大会です。

こういう書き方をしてしまうと、競技をしている人には怒られてしまうかもしれません。しかし今現在でも最新のサイボーグ技術を利用しているのは、我々身体障害者であることに変わりはないと思います。身体障害者には、現在最新のサイボーグ技術が使われています。もう既に、研究の世界では、脳に電極を埋め込み義体を制御する試みがなんかも行われています。カメラからの映像を、視覚に流して物体の形がわかるようになんて実験もありますね。人間に、「困った人を助けてあげよう」という気持ちがある限り、今後こういった不自由を解消するサイボーグ化の流れは(当然、望んだ人のみですが)続いていくと思います。

参考 Brain Computer Interface Media Kit
参考 The ‘eye-borg’: First successful implant of a ‘bionic’ eye could restore sight to the blind

ですので、そういうのが当たり前の世界になってしまったらもう、「それを楽しんでしまえばいいのではないか」と思います。

もう、パラリンピックは、最新の義体技術を競う場です。今で言うところのF1カーレースみたいなもので、観客は純粋に技術なんかを楽しみます。もちろん、それを操る人間の技量も問われます。相手は想像以上の能力を発揮する人工ボディーです。下手をしたら、現在のパラリンピックよりも人間としての能力が試されるかもしれません。僕は今現在の技術の向上にもワクワクしているのに、ここまでくると、見るのが楽しみでしょうがなくなっていることでしょう。

しかし、そうなる前に確実に、倫理面での問題が出てくると思います。

けれど、今現在でも最先端の研究では倫理面で問題があることも少なくなく、これはしょうがないのではないかと思います。先程例に出した、F1では頂上で競い合った成果が市販車にフィードバックされます。それと同様に、最新のサイボーグ技術は、身体障害者にフィードバックされ、確実に生活向上に役立つでしょう。みんなが楽しめるようになれば、スポンサーもついて更なる技術向上にもつながります。いつかこういった功罪両面を議論する日も来るんでしょうね。

かく言う僕は、たとえ今の生活が便利になるとしても、脳に電極を埋め込むほどの義体化技術をやるか?といわれれば、やらないでしょうね。だって怖いんだもの!!こういう実験に果敢にも挑戦される方のフロンティア精神は、心から凄いと思います。

ということで、ソチオリンピックのウインター競技を、技術面からも楽しめれば良いかなと思います。

 

追記:技術的に不足な部分もあるかもしれませんが、実際にこういった大会も出始めています。

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photo credit: MiaElliott via photopin cc

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